Miseria ~幸せな悲劇~


「…………」


祐希は手を震わせながら、ゆっくりとドアノブをまわそうとした。


ここで身を引きたくない。親友として美花の力になりたい。


そんな祐希の意思をメイは感じ取った。


「祐希…今はまだ…」


メイは祐希を制止するように言った。それを聞いて、祐希の手が力なく垂れ下がる。


「ごめんね。また連絡するから……」


祐希は一言だけ言い残すと病室の前から立ち去った。


三人は肩を寄せ合った。祐希は小さな子供のような声を出して泣いた。メイはそんな祐希を静かに抱き締めた。


「ごめんね、ごめんね美花……」


メイの胸の中で、祐希は何度もその言葉を繰り返した。


< 122 / 394 >

この作品をシェア

pagetop