Miseria ~幸せな悲劇~
気がついた頃には、詩依は消防士に抱えられて家の外へ運ばれていた。まさに奇跡だ。本気で覚悟した死を、詩依は間一髪で免れた。
「火だ……燃えてる………」
家はすでに真っ赤な炎に包まれていた。身体中が痛い。傷だらけだ。意識もはっきりとしない。しかし、目の前の光景はたしかに詩依の目に焼きついた。
忘れられない残酷な光景だ。消防士の顔も、野次馬達の声も、そして、あの炎の色も。