Miseria ~幸せな悲劇~
しかし、本当の地獄はこれからだった。
「火をつけたのはおまえだな! 正直に白状しろ!!」
生き延びた詩依に待っていたのはいわれもない疑惑の数々だった。警察は現場の状況から詩依が火をつけたと決めつけたのだ。彼女は炎の中から救出された悲劇のヒロインではなく、家に火をつけた悪魔として扱われた。
「違う、私は………!」
もちろん否定はした。だが、誰も詩依の話を聞かなかった。
「情けないわ……! 詩依、どうしてあなたはこんなに悪い子なの……?」
面会に現れた母が、詩依の目を見てそう言ってのけた。違う。私じゃない……そう訴え続けても、誰も信じてくれなかった。
家族も、学校も、みんな詩依を疑った。終いには、彼女を自殺のために放火をした迷惑な奴だと決めつけた。罵倒を浴び、非難を浴び、ズタズタになるまで虐げられた。