Miseria ~幸せな悲劇~
☆☆☆
「……だけど」
鉄道橋の上に電車が猛スピードで通過して行った。橋がグラグラと揺れる。
詩依を囲うメイ達に、その間だけ、上から注ぐ光が遮られた。暗闇と走行車の車輪から鳴り響く騒音が止むと、再び詩依は話を始めた。
「………だけど、大野の家の火事を目にして……思い出したのよ。だってあれは、私の家の火事と同じだったから……消防士の顔も、消火の様子も全部同じ……ただそこが私の家でなく、大野の家であることを除けばね……」
メイと祐希は言葉を失った。身体の震えが止まらない。最悪の予感が二人の脳裏に過る。
「そ、それじゃあまさか………」