Miseria ~幸せな悲劇~

「……そう。気づいたのよ私。喰イ喰イはその人の不幸を食べる代わりに、その前に食べた不幸を背負わせていくって。だから大野は足の不幸の代わりに、私の不幸を背負うことになった……」


詩依は声を震わせながら言った。


人間の不幸の連鎖。それが喰イ喰イのおまじないの正体だった。


「じゃあ美花は、大野先輩の代わりに足の怪我を負ったってこと……? 自分の不幸の代償に……」


祐希が掠れた声で言った。たしかにそれなら、美花の突然の怪我にも説明がつく。それにサッカー部の生徒が話していたこと。大野とまったく同じ箇所を怪我したことも納得がいく。


「ええ、おそらく……」


詩依はうつむきながら答えた。


「そんなの……ひどいよ………」


祐希の目には、しばらくおさまっていた涙が溢れてきた。顔を覆い隠し、また声を出して泣く。


「まって………だったら、詩依は……?」


メイは真っ青な顔で言った。メイの中で、もう一つの残酷な不幸の連鎖が繋がったのだ。
< 136 / 394 >

この作品をシェア

pagetop