Miseria ~幸せな悲劇~
詩依は涙を浮かべながら言った。
「そうよ……違うのよ……本当の私は………」
詩依はがくりと体勢を崩し、座り込んだ。
彼女が火事の代償に喰イ喰イに背負わされた不幸。それは辛い病の記憶と、弱い心臓を持った身体だった。
詩依は火事の記憶の変わりに、新たな不幸を…………苛酷な病の記憶を植え付けられたのだ。
「………私はもっと自由で………みんなと一緒の身体で………みんなと同じことができたはずなのに………なのに、はっきりと思い出せないの……! こんな身体になる前の私を……思い出せないの……!」
その瞬間、詩依は泣き崩れた。詩依がこの事実に気がついたとき、どれほどの絶望を感じたのだろう。今まで抱えてきた苦しみが全てあふれ出たように詩依は泣いた。
「……詩依」
メイと祐希はそっと彼女の肩を寄せて抱き締めた。
「………大丈夫。どんなことがあっても、私達は詩依の味方だから。友達だから……!」
メイは詩依を抱き締めながら言った。少しでも彼女の悲しみと痛みを分かち合い、力になりたかった。