Miseria ~幸せな悲劇~

先に仕掛けたのは怒りに身を任せた関口であった。


「おらっ!!!」


関口は美花の顔面をめがけて渾身の右ストレートを放った。


しかし、関口のパンチは紙一重で美花にかわされて空を切った。


「遅ぇよ、カス…」


美花はパンチの勢いのままよろけた関口に蹴りという強烈なカウンターを脇腹に突き刺した。


「う゛ぶっ!!!」


激しい痛みからか、関口の体はビクリと痙攣し、嘔吐物が口からこぼれた。


そして、ほぼ同時に、美花は関口の腹めがけて追撃の蹴りを食らわせた。


「ぐあ゛っ……!!!」


関口はたまらず地面に吸い込まれるように膝をついた。


「ちょっと、美花、もうやめなよ…」


祐希は苦しそうに声を上げる関口を見て泣きそうな表情で言った。


「うっせえな。これからがおもしろいんだろ? せめて先公がくるまで楽しませろよな」


そう言って美花は関口の胸ぐらをつかんで持ち上げると、再び関口を殴る体勢をとった。


「ちょっと、美花ってば…!」


美花は祐希の制止を振り切り関口を殴り続けた。


女子対男子とはいえ、いきさつを知らない者が見れば、おそらく美花が一方的に関口をいじめているようにしか見えないであろう。


「美花っ……」


祐希の声は美花には届いていないようであった。


それどころか美花は喧嘩そのものを楽しんでいる様子だ。


「くそっ、赤羽っ……」


二人の喧嘩の決着はとっくについてた。


もはや一方的となった美花の暴力を、関口はボロボロの状態で耐えしのいだ。
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