Miseria ~幸せな悲劇~

祐希の部屋の扉をノックする音がした。


「姉ちゃん?」


扉の向こうから声がする。弟、祐人の声だ。祐人は声変わり前で、まだ女の子の様な声をしていた。


「なに? どうしたの?」


祐希は返事をすると同時に写真を机の中にしまった。祐人にはヒビの入った写真を見られたくなかった。


祐人は扉を開けて祐希の部屋に入ってきた。


「宿題。分からないところがあって……」


祐人は甘えた声で言った。中学に上がっても、祐希にとって祐人は小さな子供のような存在だ。


「いいよ、おいで」


祐希は祐人に微笑んだ。祐人は笑顔を浮かべながら祐希の近くに寄ってくる。
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