Miseria ~幸せな悲劇~
「お姉ちゃん? 今日はポニテにしないの?」
風花は髪を下ろした美花を見て言った。
「いいんだよ。もうサッカーはしないんだし…結ぶのもめんどくさいだろ」
美花は下ろした髪を弄りながら言った。くせ毛で少しボサボサしている。
「えっー! ダメだよ! お姉ちゃんがサッカーを諦めちゃ!」
美花の言葉が引っ掛かったのか。風花は美花の顔を覗き込みながら訴えた。
「ははっ。別に諦めたとは言ってないだろ? しばらく休むってだけだよ。だだの気分転換! それに私が怪我したくらいでサッカーに懲りるわけないだろ」
美花はそう言って風花の頭をなでた。風花はせっかく結んだお団子ヘアが崩れるのを気にして嫌がったが、顔は嬉しそうだった。
「ほら行くぞ! 風花!」
美花はツカツカと松葉杖で歩き出した。
「あっ、待ってよお姉ちゃん!」
風花は小さな体で美花についていった。風花は美花が歩きやすいように、横から美花の身体を支えた。