Miseria ~幸せな悲劇~

地面に落下する直前に美花は猛スピードの電車にはねられた。美花の血と肉片が辺りに飛び散る。


「きゃあああああ……!!!!」


現場から耳を覆いたくなるほどの恐ろしい叫び声が上がった。橋の上では、美花を突き落とした男が平然とどこかへ歩いていく。男はすぐに人混みに紛れて分からなくなってしまった。



ギギギギギ…ギギギイイイイイイイイイイイイイイイイ………



電車の車輪から悲鳴のような金属音が響く。動かなくなった美花の肉片を引きずりまわした電車は、その橋から数十メートル進んだところでようやく停止した。


「…………………」


車体の下からは、まるで作り物のような美花の腕が血まみれで飛び出している。砂利と混じり合い、腕には虫がたかっていた。引きちぎられた肉片から発せられる死臭が、鼻を針のように突き刺す。電車の車輪には、彼女の赤い髪が絡みついていた。

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