Miseria ~幸せな悲劇~

「泣かないで下さい。お姉ちゃんはメイさんのこと大好きでしたよ……」


風花はメイに優しい口調で言った。


「美花が…?」


メイは涙をふいて顔をあげた。メイは風花の手を握った。


「はい。かっこよくて、綺麗で、強くて……すごい人と友達になったって、お姉ちゃん、いつもメイさんのこと自慢してました……」


風花はメイの手に何かを握らせた。


「これって、美花の髪留め……」


風花は静かに頷いた。


いつも美花はサッカーに邪魔だと言って長髪をポニーテルに縛っていた。


いっそ切っちゃえば? とメイは何度か美花に話したことがあった。しかし、美花は美花なりに自分の長髪を自慢に思い、一生懸命手入れしていた。


美花の数少ない女子らしい一面だった。この髪留めはそんな美花を象徴する大切なものだった。
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