Miseria ~幸せな悲劇~
「その………父さんがご飯作れって」
祐人はうつむきながら祐希に言った。祐人自身も、それが今の祐希にとって無理な要求であると分かっていた。
「ごめん。今、そういう気分じゃなくて……」
祐希は脱け殻のように淡々と答えた。以前として膝を抱え、祐人の方を見向きもしなかった。
「うん……そうだよね。父さんには僕から伝えておくから……」
祐人は一瞬、渋い顔をしたが、祐希の表情をうかがってすぐに部屋をあとにした。
祐人がいなくなり、部屋にはまた、異常な静けさが戻ってきた。