Miseria ~幸せな悲劇~

「お前はさ。変わらなきゃいけねぇんだよ。だって母さんがいないならさ。祐希が祐人の母さんになってやらなきゃダメだろ?」


美花は祐希の顔を見つめながら言った。


「祐人のお母さん……?」


そんなこと考えたこともなかった。


「私が……?」


祐希は涙をふきながらこたえた。


「そう。じゃないと祐人のこと、これから誰が守ってやるんだよ」


美花は祐希の肩に手をかけた。男っぽいけど、力強い言葉だ。


「でも私。そんなに強くないし……」


祐希は肩をすくめてうつむいた。


「はっ? 分かってるよ。そんなこと」


美花は祐希の頭をがっしりと掴み、自分の方に向けた。


二人の視線がぶつかり合う。
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