Miseria ~幸せな悲劇~
☆☆☆

祐希は自分の手を見つめた。あの日の美花の手の感触が、今でもはっきりと思い出せる。


「美花、なんでよ? なんで私をおいて死んじゃったのよ」


祐希は涙を流しながらベッドの上でポツリと呟いた。


その時、


ガシャン!!!!!!


何かが崩れるような轟音が、家の一階から聞こえてきた。


「なに、なんの音……!?」


祐希はその音に驚いて顔をあげた。直後に誰かの悲痛なうめき声がうっすらと聞こえてくる。


「祐人……?」


祐希は嫌な予感がした。下では祐人と父が二人きりだ。


祐希は急いで部屋を出て、階段を駆け降りた。
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