Miseria ~幸せな悲劇~

「うううっ………ううっ……」


晋吾が出て行くとすぐに、居間の方から祐人の声が聞こえてきた。痛みを堪えるような悲痛な声だ。


「祐人……!!」


祐希はその声を聞いて一気に表情から血が抜けた。すぐさま声のする方へ向かう。


「あ、ああっ………」


そこには先日、祐希が晋吾に殴られた時の倍近い酒瓶が床に転がっていた。


どれだけ晋吾が荒れていたのかがよく分かった。


「ね、姉ちゃん……?」


祐人は割れた瓶の真ん中でぐったりと倒れていた。


「祐人!!!!」


祐希は真っ青になりながら祐人に駆け寄った。


「だ、大丈夫、僕は大丈夫だから……」


祐人は祐希に抱えられながら絞り出すような声で言った。


祐人の唇にはガラスの破片がキラキラと光り、そこから真っ赤な血が滴り落ちていた。


祐人が晋吾に殴られていたことは明らかだった。
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