Miseria ~幸せな悲劇~


「大丈夫じゃないよ! ここ、血が出てる……!」


祐希は血のついた祐人の唇を指でなぞった。祐希の胸の奥で父、晋吾に対する怒りが込み上げる。


「お父さんにやられたの……? ねえ…!」


「………」


祐希から目を背けたまま祐人はただ黙ってうつむいた。


祐人の制服のシャツのボタンが取れかかっていた。その下からうっすらと痣が見える。


「祐人、その傷は……!!?」


生々しい痣だった。それも一つや二つではない。


「くうっ………」


祐人は顔をしかめながら胸のアザを隠した。そして、何とも言えない悲しい表情を浮かべた。


「いいんだよ。僕は我慢できるから……」


祐人は震える声で言った。祐希はその言葉に胸を突き刺されるような思いがした。


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