Miseria ~幸せな悲劇~

「先生? 鈴木先生……?」


線の細い女性教員が恵の顔を覗きこんだ。


「ああ、なに?」


恵はやつれた表情で言った。


「校長先生がお呼びです。例の生徒の件で……」


女性教員は複雑そうな面持ちで言った。


「ええ、分かったわ」


恵は写真をポケットに入れて立ち上がった。


「先生、大丈夫ですか? ひどくお疲れのようですけど……」


恵の顔を見て教員は不安げに尋ねた。


「ええ。昨日亡くなった生徒の葬儀があって……覚悟はしていたけれど、かなりこたえたわ」


恵の脳裏に葬儀場での詩依の顔が浮かんだ。美花を失った彼女達の心の傷は、恵にも計り知れないものだった。


「でも私なんかより、生徒達の方がずっと深刻で……私のクラス、もうどうなることか…」


恵はぐったりと頭を抱えた。いつもの元気な彼女からは想像できないほどやつれていた。
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