Miseria ~幸せな悲劇~
「ユウキ、ユウキ、ユウキガキタ!!」
何体かのフランス人形が子供のように動き回りながらダイニングルームに姿を現した。
それに連れられて青いドレスを身にまとった祐希が部屋に現れる。
「………」
祐希は眉をひそめたままテーブルの近くまで案内された。
「どうぞ座って。水島祐希……」
喰イ喰イが手で合図をすると、執事は喰イ喰イの向かいにある椅子を引いて祐希を誘導した。
祐希の目に喰イ喰イの横に膝まずいて座る父、晋吾の姿が映った。無様な姿だ。テーブルに置かれた彼の右腕は手首の先がなかった。
「うぷっ……!」
晋吾の右手が喰イ喰イによって食されている。
そのことに気がついた祐希は、吐き出しそうな顔を浮かべながら視線をずらした。同時に、人間の肉を食らう彼女に祐希は慄然とした。
「どうしたの? はやく座ったら…?」
喰イ喰イは平然と祐希に席につくように促した。
祐希は顔を背けたままゆっくりと椅子に腰かけた。