Miseria ~幸せな悲劇~

思っていたよりもずっとか細くて幼い子だ。もしかしたら、私よりも年下かもしれない。


祐希は喰イ喰イの姿を見てそう思った。


喰イ喰イの背は小柄な詩依よりもさらに低かった。それに吹けば飛んでいってしまいそうなくらい細い体をしていた。


でも、この子が美花を死に追いやったんだ。


神様なら、美花にとってサッカーがどれだけ大切か分かっていたはずなのに。なのに大野先輩の怪我を美花に背負わせて。それで………


祐希はそんな思いを抱きながら、喰イ喰イを静かに睨みつけた。ふつふつと彼女に対する敵意がわく。


「ふふっ………」


喰イ喰イはそんな祐希の視線に気がつくと、うっすらと不気味な笑みを浮かべた。


執事は祐希のグラスに真っ赤なワインを注いだ。しかし、祐希はテーブルの料理には目もくれず、喰イ喰イに視線を注いでいた。
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