Miseria ~幸せな悲劇~

「美花もあなたを呼んだんですね。喰イ喰イ……」


祐希は喰イ喰イに尋ねた。


「ええ、赤羽美花。とても素敵な人だったわ…」


喰イ喰イはワインをすすりながらそう答えた。


「なぜあなたは美花に大野先輩の怪我を背負わせたんですか……? それがどれだけ美花を追い詰めることになるのか……あなたなら分かっていたはずでしょ…?」


祐希は青いドレスのスカートを机の下で握りしめた。


祐希の瞳の奥には、喰イ喰イへの隠しきれない怒りが浮かんでいた。


「ええ、そうね。知っていた……」


「じゃあ、なんでなのよ……?」


美花を死に追いやり、詩依に一生消えることのない傷を背負わせた。その張本人を前に、祐希は込み上げてくる感情を抑えることができなかった。


喰イ喰イはそんな祐希を前にしても自若としていた。まるで遥か遠くのニュース記事を穏やかな朝の食卓で眺めているようだ。
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