Miseria ~幸せな悲劇~
「私の力を借りた代償に、そして、神によって定められた運命を逃れた代償に………あなた達人間には身代わりになってもらうのよ…」
祐希の姿をした人形は甘えたように喰イ喰イの指にまとわりつく。
「キャッ、キャッ…!!」
喰イ喰イはそんな人形の頭を愛しそうに親指で撫でると、
グサッ………………!!
空いた左手を使って人形をフォークで頭から串刺しにした。
「アゥ、アゥ………………!!」
人形はビクビクと体を痙攣させながらふらつくと、そのまま机の上から地面に落ちていった。
「そう、まるで人形のようにね………」
祐希は思わず呼吸を止めたまま落ちた人形の姿を見つめた。
この時、祐希は喰イ喰イという少女に底知れぬ恐怖を感じた。まるで深淵の底に住み着く怪物と遭遇した気分だった。
だけど、この子は多分……
同時に、祐希は喰イ喰イの言葉に粘りつくような違和感を覚えた。
嘘をついている。
はっきりとした根拠はなかった。しかし、祐希は直感的にそう感じた。