Miseria ~幸せな悲劇~

その後、祐希は警察署で取り調べを受けた。異様な遺体発見現場であったが、不思議なことに、晋吾の死は大方自殺という線で片付けられた。


祐希は数時間後に取り調べを終えた。もちろん、喰イ喰イの話を警察にすることはなかった。


「祐希……!」


警察署から出てくる祐希をメイは腕を組みながら待ち構えていた。


「メイ……」


父に対する後ろめたさがあるのか、暗鬱な表情で祐希はメイから目を逸らした。


そんな祐希の手をメイは優しく握りしめた。祐希の手はずっと外で待っていたメイよりもひんやりと冷たかった。


「帰ろっか」


メイは一言そう呟いて、祐希の手を引っ張りながら歩き出した。


「……うん」


メイの背中にむかって祐希は弱々しく答えた。
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