Miseria ~幸せな悲劇~
日は完全に落ちて外は真っ暗だ。海岸沿いの公道では、ほんのりと潮の香りがする。夏の熱気を裂くような潮風がメイと祐希の髪を洗った。
普段からは考えられないほど、どんよりとした沈黙が二人を包んでいた。警察署を出てから、メイは祐希の手を引いて歩いていた。祐希はただその背中を無言で見つめている。
「祐希、おじさんはどうなったの……?」
メイは沈黙を破るようにはっきりとした声で言った。祐希はその言葉を聞いて、繋がれていたメイの手を離した。
「お父さんなら死んだよ。私のせいでね……」
祐希の言葉にメイは全てを悟った。
彼女が予感した通り、祐希は喰イ喰イを呼び出したのだ。そして喰イ喰イの力によって、祐希は父、晋吾を消した。
「そっか……」
メイは髪を掻き分けながらうつむいた。これで祐希も喰イ喰イの不幸の連鎖に組み込まれてしまった。
「ねぇ、メイ………」
祐希はメイの制服の袖を後ろから掴んだ。