Miseria ~幸せな悲劇~

毎日通い慣れたはずの学校。だが、真夜中のそれはまるで昼間とは別世界のように暗闇で満ちていた。


メイを先頭にして、祐希、詩依の三人は辺りをうかがいながら真っ暗な廊下を進んでいた。


普段は叱られるが、この時はすぐに外へ出られるように外靴を履いていた。窓からの月明かりでなんとか足元は見える。電気をつければ流石に外から怪しまれるだろう。


「けっこう、雰囲気あるわね…」


ただでさえ普通の学生にはハードな学校の肝試しだ。それも今回は喰イ喰イが秘密を守るために襲ってくるかもしれないという恐怖があった。


「どうする? 私は職員室とか怪しいと思うけど」


メイが後ろからついて歩く二人にむかって尋ねた。職員室には学生個人に関する資料がまとめてあるからだ。


「そうだね、じゃあ、まず…」


祐希が言いかけたとき。


「おい…!」


三人の背後から何者かがかすれる声で呼びかけた。
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