Miseria ~幸せな悲劇~


メイが振り返ると、そこにはがたいのいい一人の男が懐中電灯をむけてこちらを睨みつけていた。


「お前らここの生徒か? ここで何してる?」


どうやら男は学校の見回りに来た警備員のようである。


「え、えっと……」


想定外の事態だ。当然ここで警備員に捕まるわけにもいかないが、まして事情を説明して理解されるとも思えなかった。


「おい、なんかしゃべったらどうだ? えっ?」


どうやってこの事態を打開するか。メイは警備員の顔色をうかがった。


しかし、その時、


「ん…?」


コツコツコツ……と、誰かがヒールで歩く音が廊下中に響き渡った。その音は徐々にメイ達の方に近づいてくる。


警備員を含め全員の視線が音のする方へ向けられる。やがて足音の主が廊下の端に姿を現した。


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