Miseria ~幸せな悲劇~
「誰だおまえ…? まだ他に連れがいたのか…」
廊下の端から人型の黒い影が迫る。警備員は手にしていた懐中電灯の光をむけた。
影が光によって照らされる。
「……!」
懐中電灯の光が映し出したのはうっすらと笑みを浮かべる黒髪に蒼白の肌を持つ少女だった。
「く、喰イ喰イ…」
祐希は震えながらその少女を指差した。その言葉にメイと詩依は体を震わせた。
「ふふっ……」
喰イ喰イは青色の瞳をギラギラと光らせながらこちらに迫ってくる。冷たい冷気のような空気がその場にいた者を包む。
「な、なんだ、おまえ!」
強気に振る舞う警備員だったが、本能的に体は危険を察知したのか、凍死するように震えていた。
喰イ喰イはじわじわと距離を詰める。死人が歩いているような異様な雰囲気だ。この時のメイの目から、彼女がこの世の者ではないことは明らかだった。