Miseria ~幸せな悲劇~

足音は徐々に遠ざかっていく。


音からして、女子生徒は職員室の奥の方へ行ったのだろう。今ならメイ達の隠れる机からもっとも遠い位置だ。


行くなら今しかない…!


メイがそう思ったのとほぼ同時に足音はピタリと制止した。


メイは手で小さく祐希と詩依に合図を送り、一気に職員室の入り口にむけて走り出した。


「痛っ!!」


走り出したはずだったが………


「ちょっと! メイ! どうして止まるのよ!」


詩依と祐希は急に立ち止まったメイに鼻柱をぶつけてしまった。


「っ………!」


そんな二人とは対称的に、メイはいつになく怯えた表情をうかべながら職員室の奥を凝視していた。


「メイ、どうしたのよ?」


祐希と詩依は恐る恐るメイの視線を追って後ろを振り返った。
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