Miseria ~幸せな悲劇~
「詩依! 危ないっ!!」
「えっ……!!」
その影にいち早く気がついたのはメイだった。とっさにメイは脊髄反射したかのように詩依をかばい黒い影を受け止めた。
「あ゛あ゛あ゛…! あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」
窓からさしこんだ月明かりがその黒い影を照らす。
それは黒髪に白髪まじりの少女だった。目玉は上を向き、息使いは獣のように荒い。そして何よりも驚いたのは、少女には下半身がなかったことだ。
「きゃあああ…!!!!!!」
おそらく先程の下半身しかない生徒の半身がこの怪物なのであろう。
内臓から血をだらだらと垂らした少女は上半身だけの体でメイに襲いかかった。