Miseria ~幸せな悲劇~
このままじゃ三人とも殺される…!
そう思ったメイはとっさに近くにあった机の上に乗り、
「来な! 化け物!! 私が相手してやるよ!!」
そう叫んで少女をメイのもとに誘導した。
「ふふへへへ…!」
少女は笑い声をあげながら左足をメイに投げつける。
「おっと…!」
しかし、メイは紙一重でそれをかわし、机の上を走りながら祐希達とは逆方向へ逃げていく。
「う゛あ゛あ゛あ゛……!!」
メイの挑発的な態度が気に触ったのか、少女は祐希と詩依には目もくれずメイに的を絞り走り出した。
「メイ!!」
スペースの限られた場所を、手の力のみで走っているとは思えないほどの人外な速度でメイを追う。
すぐにメイに追いつきその細い首を切り落とそうと手を伸ばした。
「このっ……!!」
メイは机の上にあった花瓶や本を投げつけその進行を阻止した。
「う゛があ゛あ゛あ゛…!!!」
上半身はメイの攻撃で血まみれになりながらも、まるで跳ね回るボールのようにすぐにまたメイに攻撃をしかけ続けた。
「くっ…!!!」
メイは職員室にあるものを使い間一髪でその攻撃を退いていく。
正確には化け物の爪や牙を服や皮膚に掠めてはいたが、どれもメイの動きを止めるほどの致命傷には至っていなかった。
「はぁ、はぁ、はぁ……!」
しかし、もしメイが一瞬でも気をぬいてまともに攻撃を受けたならば、それは熊に襲われた不幸な人間の子供のようにいとも容易くバラバラに体を引き裂かれてしまうだろう。それほど少女は強力な力でメイを襲っていた。
一瞬でも気を抜くことができない。
もし怖いと思えば、おそらくそう感じる前に殺されるだろう。
命懸けの状況でメイは自身の直感と反射神経のみを頼りに少女の攻撃を避け続けた。