Miseria ~幸せな悲劇~
「ミーツケタァ……!!」
「うわっ!!」
数体の人形達は下駄箱の上から麻衣の頭に飛びかかった。
「もう、しつこいなぁ!!」
麻衣はなかなかの反射神経で人形達から身を守った。
「キャハハハハハッ…!!!!!」
黄色い笑い声をあげながら人形達は麻衣に襲いかかる。
その手には例の刃物が握られていた。
「もう怒った! 小さい子だからって容赦しないんだから!」
麻衣は傘立てに忘れてあった傘を手に取って向かってくる人形を野球のボールのように打ちつけた。
「グェェグゥゥヴヴッ…!」
人形はその衝撃で蝋の顔面を割られ、まるでファールボールのように飛んでいった。
「ウァァ…!」
麻衣の思わぬ反撃に人形達は身をすくめた。
メイを助けたいという麻衣の気持ちが、試合前のスポーツマンのように、脳に大量のアドレナリンを分泌させた。
あれ? 案外勝てそうじゃない、私…?
麻衣は自信ありげにニヤリと笑った。
「ほらそこ!そこの君!」
麻衣は道をふさぐ50cmくらいの人形を指差した。
「エッ? ナニ?」
人形は目を丸くして頭をかしげた。
「どけ」
「エッ?」
「そこをどけぇぇ!!」
麻衣はサッカー部秘伝のシュートをその人形に食らわした。