Miseria ~幸せな悲劇~
しかし、祐希の気持ちとは裏腹に、その影は扉から遠ざかっていった。
次第に影は小さくなっていく。
「待って、美花!!!!」
その影を追って祐希は勢いよく飛び出した。
「ちょっ、祐希!!」
メイは大声で呼び止めたが祐希は美花かもしれないその影を追っていった。
「まずい、どう考えても罠だよ、だって美花は…」
そう、美花は死んだのだ。
歩道橋から線路に落ちて電車にはねられた。
死んだ美花が現れるはずはない。
「メイははやく祐希を追いかけて。私もすぐに追いつくから……」
詩依は心臓をおさえながら少し苦しそうに言った。
「詩依……」
学校に侵入してから走り回ってばかりだ。やはり詩依は病をおった体にかなり無理をしていたようである。
「わかった。すぐに捕まえる」
そう言ってメイは詩依をおいて祐希を追いかけて走り出した。
見ると祐希はすでに廊下の奥の階段を下りていった。