Miseria ~幸せな悲劇~

「ねぇ、結局、美花はどうだったのよ?」


詩依は祐希に聞こえないように小声でメイに言った。メイは何も答えずに首を横にふった。


それを見て詩依は表情を引きつらせた。


「そう、美花がいたらね…こんな時こそ美花がいてくれたらどんなに心強いか……」


祐希はそう言って美花がいた場所まで歩いた。ここにきて、一番祐希は寂しそうな顔をしていた。


「祐希、もうその話はやめようよ。辛くなるだけだからさ……」


メイはそんな祐希の肩を慰めるように掴んだ。


「ううん、いいの…」


祐希は静かにメイの手に触れた。


「幻でも、また美花に会えたから…」


祐希はポツリと呟いた。その言葉にメイは思わず右手につけていた美花の髪留めを触れた。


「あれ、ここって……?」


詩依はふと祐希とメイの立つ近くの部屋に目をやった。


「校長室? そういえばまだここは探してなかったわね」
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