Miseria ~幸せな悲劇~
そこには、黒髪に青い瞳の少女、喰イ喰イがたたずんでいた。ついにメイ達は喰イ喰イと対面した。
「………これはルールだって。今度はあなたが赤羽美花の運命を受け入れる番なのよ…」
喰イ喰イは嘲るように祐希にむかって微笑んだ。
「あ、あなたの理不尽なルールを…? でも私は……祐人を危険な目に合わせることまで認めてなんていない!」
祐希はメイの手を握りながらそう叫んだ。
「そう? なら忠告しておくけど、私は……私の劇を乱す者は許さない…」
「……………」
喰イ喰イの目から恐ろしいほどの敵意を感じた。しかし、祐希は怯まずに、無言で喰イ喰イに鋭い視線を送り続けた。
そんな中、喰イ喰イはおもむろにメイの手にある例のセーラー服を指差した。
「さぁ、メイ………」
その瞬間、喰イ喰イが今まで祐希に浮かべていた薄ら笑いは一瞬のうちに消え伏せた。
「それを渡して……」
「えっ……」
突然、喰イ喰イの視線はそのセーラー服一点に注がれた。
渡すって、このセーラー服を…?
メイは喰イ喰イの態度に違和感を覚えた。メイには喰イ喰イの瞳に僅かながら焦りの色があることを感じた。
「嫌だ、誰があんたの言うことなんて聞くか」
メイはそう言ってセーラー服を握りしめた。
同時に詩依は窓際にあった金の時計を手にとった。
喰イ喰イは手を伸ばしたまま徐々にメイ達に近づいていく。
「渡して」
喰イ喰イは再度メイにむかって言った。
「嫌だ……」
「………」
メイはなおも詰め寄る喰イ喰イに対して強気に振る舞った。