Miseria ~幸せな悲劇~
「朱実……! 私の邪魔をしないでよ…!」
喰イ喰イは自分の中にいるある者に語りかけた。喰イ喰イという怪物の中に潜む、もう一人の人格である。
お願い、もう。やめて。
金属が磨り切れるような音が喰イ喰イの脳に響く。
「くうっ………!!」
喰イ喰イの中に声が響いた途端、喰イ喰イは激痛によって頭をおさえて座り込んだ。
「朱実……!」
セーラー服に宿っていた朝比奈朱実自身の記憶。
そして、神崎メイとの対面が喰イ喰イの中に眠っていたもう一人の人格を呼び起こしたのだった。
やめて。やめて。
もう私は、
誰も、誰も傷つけたくない。
朱実の声は喰イ喰イの中に喧しく響く。
喰イ喰イは心の中でその声を必死におさえつけた。