Miseria ~幸せな悲劇~
「はぁ、はぁ………」
メイ達三人は全速力で学校の中庭まで走り抜けた。
「うぐぇ、ゲホゲホ…」
「だ、大丈夫…?」
詩依は苦しそうに吐き気を催すと、メイと祐希は彼女を連れて花壇にある草むらの中に身を潜めた。
「……ったく、死にかけたわよ。あの糞野郎…!」
詩依は息を切らせながら怒り混じりに言った。
詩依の身体は汗でびっしょりと濡れていた。
「やっぱり、あいつの狙いは祐人を襲って悲劇の連鎖を完成させることだった。それにあいつは……」
祐希がメイの持つセーラー服を見つめた。メイは手にしていたセーラー服を再度、ギュっと握った。
「うん。この血のついたセーラー服を喰イ喰イは奪おうとしていた。おそらく、朝比奈朱実のセーラー服をね」
メイの脳裏に集合写真でみた少女の顔が浮かんだ。顔や身体つきは喰イ喰イにそっくりだったが、目だけは喰イ喰イと違い黒かった。それにどこか、幼くて無邪気な印象を写真から抱いた。
「でもなんで、あいつはそのセーラー服を狙ったんだろう…? もしかして、それが喰イ喰イの弱点と関係あるのかな…」
祐希はそう言うと一冊残った魅郷のノートを開いてぺらぺらとめくった。
「……わからないけど、あいつが奪おうとした以上、私の手の中にこれがあることが、あいつにとって何か不都合なんだと思う…」
メイが言った。たしかに、あの時の喰イ喰イの態度はおかしかった。何としてでもセーラー服をメイから奪おうとしていた。
「あっ……」
そんな最中、祐希はあるページで手を止めた。
「なにか書いてあったの? 祐希?」
詩依は息を整えながら祐希に尋ねた。