Miseria ~幸せな悲劇~
「もしかして火かな…?」
祐希はノートにある文章を指差した。
「えっ……?」
「ほらここ! 人形の弱点と対策って項目に書いてある」
そこにはびっしりと魅郷の字で文章が書き込んであった。
「人形は火で完全に殺すことができる。それは、人形達の蝋が溶けるとその形態を維持することができないためである……」
静かに読み上げる祐希の声を聞いて詩依とメイは息を飲んだ。
「喰イ喰イも人形の主であり、生身の人間の身体を持つ以上、火は有効な攻撃手段となり得る。しかし、そのためには超能力で喰イ喰イが逃げる前に、一瞬で全身を火にかけ、中身を殺す必要がある…って」
祐希が一通り読み終わるとお互いに詩依とメイは顔を見合わせた。
「どう思う、メイ? 本当にそれであいつが死ぬと思う?」
詩依はメイに尋ねた。
メイは髪を弄りながら地面の方を見つめていた。
「うーん、文章だけだと確信は持てないけど…でもまずはあれこれと考える前に、そこに書いてあることが本当か実験してみるのがベストだと思うよ」
そう言うとメイは制服のジャケットを脱いだ。
「誰か火をつけられるもの持ってない?」
「あっ、私持ってるよ」
祐希はポケットから職員室で見つけたライターを取り出した。