Miseria ~幸せな悲劇~
ビンに詰められた『黄リン』は空気に触れた瞬間に自然発火し、その火花は家庭科室に充満していたガスを爆発させる。
「うわっっ…!!」
「きゃあっ…!!!」
凄まじい爆発が起こり、家庭科室が火で包まれる。
間一髪で爆発を逃れた祐希と詩依は爆風でメイにむかって弾き飛ばされた。
「みんなっ……!」
メイはうまく詩依と祐希の身体を受け止めた。
三人は勢いで壁に叩きつけられたが幸いにも怪我には至らなかった。
喰イ喰イと人形をおおう火は家庭科室の天井にまで及んでいた。水をかぶっていたとはいえ、三人は強烈な熱さを感じた。
「ギヤ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ア゛ア゛ー!!!!」
火の中からは人形達の断末魔が聞こえてくる。脳に響く耳鳴りのような叫びだ。
「か、勝ったの…?」
詩依は火の中で悶え苦しむ人の影を目でおいかけながら掠れた声で言った。あの中で喰イ喰イが焼かれている。