Miseria ~幸せな悲劇~

「おい、起きろおまえ!!」


「んっ…」


どれくらいの時間が経ったのだろうか?


メイは誰かに身体を揺すられて目を覚ました。


「あっ、あなたは!」


目を開けると、そこには喰イ喰イに惨殺されたはずの図体のいい警備員の姿があった。


「おまえら、こんな時間に何してるんだ?」


警備員は顔を強張らせメイに尋ねた。


「えっと」


メイは不思議そうに辺りを見渡した。


すると全焼していたはずの家庭科室はいつもと何ら変わらない姿でメイの目の前にあった。


「祐希! 詩依!」


隣には祐希と詩依が息をしながら眠っている。


どうやら二人は無事のようだ。


そうだ、私………


メイは自分の身体を確認した。あるはずの火傷はおろか、人形から浴びた返り血もない。


さらには人形を縛って燃やした際に使ったジャケットも身につけていた。


これじゃあまるで学校に侵入する前となにも変わらない。一体何が…?


メイは不思議そうに頭を抱えた。


「おい!! 聞いてるのかおまえ!?」


時計を見ると、時刻は夜の10時過ぎだ。


ちょうどメイ達が学校に乗り込んだ時刻である。


「んん、何よ…」


メイに厳しく聞き込みをする警備員の声を聞いて、祐希と詩依も夜更かしした修学旅行の朝のように目を覚ました。


「えっ、どういうこと…?」


メイと同じく、二人もまた豆鉄砲を食らったような顔で辺りを見渡した。
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