Miseria ~幸せな悲劇~
それから、うまく言い訳をしてその場をしのいだメイ達はそそくさと学校をあとにして校門の前にいた。
「あっ、もしもし祐人! 今、平気? 化け物に襲われたりしてない!?」
学校を出た祐希はいの一番に祐人に電話を掛けた。
喰イ喰イが生きていたとしたら、真っ先に狙うのが祐人のはずだからである。
「えっ、どうしたの? 僕は別になんともないけど、化け物って?」
祐希は内心、不安でいっぱいだったが、電話越しには祐人の拍子抜けするほど元気そうな声がした。
「よかった。本当によかった」
祐希は安堵した声でそう言うと、メイと詩依に目で祐人の無事を伝えながら頷いた。
「とりあえずこれでひと安心ね…」
「うん……」
詩依とメイはそんな祐希の顔をみて安心したように笑顔を見せた。
「ううん、何でもないの。祐人、うん……」
祐希はメイと詩依から少し離れた場所で電話を続けた。
祐希と祐人が何を話しているのかまでは分からなかったが、祐希は時おりにこやかな笑顔を見せた。
メイはそんな祐希の表情を見たのは、とても久しぶりな気がした。