Miseria ~幸せな悲劇~

メイは発狂して喰イ喰イの方に走り出した。


喰イ喰イはなにも言わずにホームの階段を上がっていく。


「待ってよメイ、落ち着いて!!」


詩依は突然発狂したメイの腕を掴んで彼女の暴走を止めた。


「嫌だ! 離せよ!!」


しかし、メイはそんな詩依の手を無理やり振りほどいた。


「メイ…?」


メイは、詩依を敵対視するような目で睨んでいる。


「はぁ、はぁ、はぁ…」


まるで目の前に立つメイはメイの姿をした別人のようであった。


「一体、どうしたのよ…」


詩依は不安げにメイに言った。


「何よ…? あんた、あんたなんか知らない…」


「えっ………」


メイは親友である詩依にむかって平然とその言葉を発した。


「知らないって、どういう意味よ…?」


言葉の意味を問う詩依であったが、メイは怯えきった様子で頭を抱えた。


「知らない、怖い………怖いよおおおぉ…」



そう言うとメイは詩依を突き飛ばしてまたホームの階段にむかって走っていた。


「メイ………」


詩依は悲しげな表情でメイの方を見つめた。
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