Miseria ~幸せな悲劇~

そんな私にはどうしても欲しかったものがあった。


『ねぇ、ねぇ! 祐希ちゃんって、すっごい髪きれいだよね!』


『本当!シャンプーとか何使ってるの?』


『えっ!? そうかな? 特別なことは何もしてないんだけれど』


いつも私は、


教室の隅で彼女達の声を聞いては、唇を噛んでいた。


『友達、か…』


私は誰かとの一体感を、


そして、


私を理解してくれる他者を心の底から求めていた。


とにかく、私は居場所が欲しかったのだ。


ありのまま、私の全てを受け入れてくれる場所。


その思いは高校に入学してからさらに大きくなる。


今思えば、


私が人前で手首を切るようになったのも、誰かに私を見て欲しいという意味もあったのかもしれない。


『特別なことはしてないだぁ!? 嘘つくなよこの艶髪野郎! 私の前でよくもそんな嘘つけるな!』


『うわっ! 美花! そんなに髪の毛触ったらクシャクシャになっちゃうよ!』


『えー、赤羽さんだって髪の毛綺麗じゃん!?』


『そうそう、充分艶髪だと思うよ!?』


『あっ? これでも同じこと言えんのかよ!?』


『うわっ! 髪ほどくとそんなに癖っ毛なんだ?』


『わ、笑うな、くそ! あっ、誰だ今髪の毛触ったやつ!』


人間のどんな集団にも共通して言えることがある。


絶対に輪に入れない外れ者がいる反面、


輪の中心で誰よりも大声を上げる者がいのだ。


もちろん、私の教室での地位はしっかりと理解しているつもりだった。


だけれど、


どうしても妄想してしまうのだ。


毎日、暇さえあれば、


私が、あの場所にいたらな……………って。


本当に馬鹿げているよ。


ずっと、叶わない願いだと思っていた。
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