Miseria ~幸せな悲劇~
『う゛あ゛あ゛あ゛あ゛ーーー!!』
刃傷事件を起こした私は、
結局、私立病院の精神科に入院することになった。
今まで心の拠り所にしていた刃物は全て没収されてしまった。が、私はあらゆる手段を使ってそれを手に入れ、自傷行為を続けた。
そして体の傷が医者や看護師に見つかる度にまた、刃物は取り上げられた。
ずっと、
その繰り返し。
『もっと、痛く…!! もっと強く…!!!』
だけれどいつしか、誰も私のことを見なくなった。
手に余る異常者として病院からも見放され、
私を塵屑のように煙たがり、誰も私に関わろうとしなくなった。
『いっそ、私に、死んで欲しいと誰しもが願うなら…』
望み通りに逝ってもいいかな?
ただそれで、せいぜいみんな後悔するといい。
私の死をもって、おまえらは。
永遠に私と言う存在を頭の隅に住まわせ苦しむことになる。
『そうすれば、少しは【神崎メイ】という存在の価値も……!』
そうして私は、病室のベッドに備えつけられている机に左手を固定して、掌を何度もナイフで刺した。
痛みは今までの比ではない。
ナイフが肉を貫いて骨を抉る感覚が分かった。
それでも私は、止めようとはしなかった。
それどころか。
『ま゛た゛!!!! も゛っと゛!! も゛っ゛と゛、痛゛く゛!! 痛゛く゛な゛ら゛な゛い゛と゛…!!!』
私はナイフを天にかざし、口を開いた。
私が思いついたのは、刃物を飲み込むこと。
私の中を、内臓を、ぐちゃぐちゃにしたかったのだ。
私はナイフを飲み込むように降り下ろした。
『なっ…!』
降り下ろしたはずだった。