Miseria ~幸せな悲劇~
メイ達三人は喰イ喰イについてあれこれと話しながらグラウンドのすぐ近くまで来ていた。
「…つまり、大野先輩の怪我が治ったのは喰イ喰イのおかげかもってこと?」
祐希が詩依に尋ねた。
「ええ、サッカー部の連中が言うにはとても一晩で治る怪我じゃなかったそうよ」
「でもだからって、それが喰イ喰イのおかげだって方が私はあり得ないと思うけど」
詩依の話にメイは冷静になって反論した。おまじないの効力と怪我の回復を結びつけるより、メイにとって、例えば、医者の見込み違いで怪我が突然完治してしまったといったことの方がよほど納得のいく話だ。
「それもそうだけど、連中が言うには大野が何かを隠しているのはたしかみたいよ。現にどうやって足を治したかについては何も話さないらしいしね…」
サッカー部員の一部はそれらを理由に大野が喰イ喰イを呼び出して足を治させた。つまりは、
足の怪我という『不幸』を食べてもらいなかったことにしたのではないか。
と思っているらしい。
「それに私は前々から少し妙だと思っていたのよ。喰イ喰イのおまじない……なんだか現実にはありえないはずの違和感を感じるというか…」
詩依はそう言うとおもむろにグラウンドのフェンスに手をかけた。
詩依が言うには、以前から喰イ喰イのおまじないの効力にあやかったとされる人物の話を聞いたことがあり、その中には嘘と断定できないほどのものがいくつもあったのだという。
メイが疑問に思っていた詩依が喰イ喰イを完全に否定しない理由も、そう言った話の積み重ねがおまじないを信じるに足りる根拠となったということなのだろう。
そこへ、