Miseria ~幸せな悲劇~

「お、おい! 一人倒れてるけど大丈夫かその子!?」


大野と祐希は地面に伏して呆然と固まる詩依に声をかけた。まだショックが残っているのか、詩依はまともに返事ができなかった。


「えっと、多分…」


メイは詩依をチラッと見て、


「大丈夫です」


そう答えた。


「ちょっと、待ってよ大野先輩!」


メイ達のもとに、見慣れたポニーテール姿の美花が汗だくで駆けてきた。


大野先輩?


美花の言葉から、メイは詩依を転ばせたのが探していた大野怜先輩であることが分かった。


短髪で髪を染め、ピアスを開けた大野の姿は、メイが想像していた人物よりずっと男勝りで悪人面だった。


「あっ、なんだみんな!わざわざグラウンドまで迎えに来てくれたのか?」


美花は嬉しそうに微笑んだ。彼女は服が透けるほど汗をかいている。かなりきつい練習をしたようだが、美花の表情は今日一番に晴れていた。
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