Miseria ~幸せな悲劇~
「ん? こいつら美花のダチだったのか?」
汗をふきながら大野が言った。
「はいっ!祐希とメイと、あと詩依です」
美花は一人づつ名前を呼んでから指差した。名前を呼ばれた時点で、詩依はまだ地面にいた。
「ふーん、こいつらが噂の問題児グループね」
大野は三人をじろじろと見つめながら言った。
「問題児って…」
まさか初対面の大野にまで言われるとは。メイ達四人は凪瀬校で(悪い意味で)かなり有名人のようである。
メイは問題児と思われていることをなんとなく悟ってはいたが、もちろん、良い印象を抱いていなかった。
「なぁ、メイ!大野先輩すごいんだぜ、さっきのシュートあんな遠くからノーバンで蹴ったんだ!」
美花は嬉しそうに指差した。どうやらほぼグラウンドの反対側にあるゴール付近を指しているらしい。距離にしておおよそ50Mだ。
「へ、へぇ…」
その結果、詩依が犠牲になったわけだが。メイは苦笑いした。
「ダチが来たなら、今日はこの辺で勘弁してやるよ」
大野が言った。
「えっ! いいんすか!?」
かなり疲れていたのか美花は嬉しそうだった。
「その代わり! また今日みたいなことがあったら強制夜間学校合宿だからな!」
「げっ、き、気をつけます」
大野の脅しに美花はうつむき気味で答えた。
「詩依、立てる?」
祐希は未だに倒れている詩依に手をさしのべた。
よほどフェンス越しで顔面に直撃した大野のシュートが怖かったのだろう。
「た、立てるわよっ…!」
詩依は動揺を隠すように祐希の手をはらうと、自力で立ち上がった。