Miseria ~幸せな悲劇~
「あの、大野先輩ですよね?」
「ん、なんだよ?」
詩依はスカートの汚れを払いながら言った。150cmの詩依が立ち上がってもなお、大野は詩依を見下ろしていた。
「先輩は……喰イ喰イって知っていますか?」
「えっ…!」
唐突な詩依の言葉を聞いて大野は難しい表情のまま黙りこんだ。
「先輩? どうしたんすか?」
美花は急に口を閉じてしまった大野に不思議そうな表情で尋ねた。『喰イ喰イ』という言葉を聞いた途端、大野の表情ががらりと変わったのである。