Miseria ~幸せな悲劇~
「どこ…? どこにいるの……?」
メイは病院の三階から声の主を探した。
すると、庭に佇む立木の影に、一人の黒いドレスをまとった少女が姿を現した。
魂を抜き取られた死人のように青白い肌。そして、摂食障害者のように細い体。
髪は艶かしい濡羽色で精巧な日本人形のように美しい。
瓜実顔の和風美人を思わせるような彼女の顔立ちとは正反対に、目はガラスのような輝きを放つ青色をしていた。
「…………」
少女は暗がりの中でメイを見つめ、静かに微笑んだ。すると夜の闇の中に一瞬で消えてしまった。
「ははっ、はははっ……!」
メイは不気味な笑顔を見せながら紙と用意してあった塩水を手に取った。
メイはある『儀式』を始めたのだ。
それは、神と繋がり、人間の運命をも覆す、呪いの儀式だった。