Miseria ~幸せな悲劇~
「おいっ!! 祐希!!! 祐希!!!!」
一瞬おとずれた沈黙を裂くように、どこからか祐希を呼ぶ男の怒鳴り声が聞こえてきた。
「な、何?」
その声に四人は驚いて萎縮した。
「だ、誰よ?」
詩依が祐希に尋ねた。
「……ご、ごめん、お父さんだ。大丈夫だから、ちょっと待ってて……」
そう言って祐希は部屋を出て下の階に降りていった。
祐希が出ていったあと、残された3人はしばらく気まずそうに顔を見合わせていた。
「祐希、大変だな。あんな親父がいて」
美花が言った。
「ちょっと、うるさくしすぎちゃったみたいだね」
メイは静かに祐希が出ていった方を見つめた。ここ数ヵ月、祐希から父の気性が荒れ、手がつけられないことがあると聞いたことがあった。
下の階から、また、祐希の父が怒鳴る声が聞こえてくる。言葉としては聞き取れなかったが、メイは祐希の父の実態をおおよそ感じ取った。