Miseria ~幸せな悲劇~
メイが玄関の扉を開けようとすると、
「うわっ!」
外から誰かが先に扉を開けた。
「姉ちゃん…?」
そこには弱々しい声で祐希の弟、水島祐人(ミズシマユウト)が顔を覗かせていた。
祐人は祐希に似た華奢で細い体と、潤った大きな瞳をしていたが、髪の色は祐希と違い亜麻色だった。写真の中の父親の髪と同じ色である。
「なんだ、祐人か」
美花が安心したように言った。祐希の幼馴染みである美花にとって、祐人は弟のような存在だった。
祐人はキョトンとした顔でメイ達の顔を見渡した。
「……姉ちゃん、遊びに行くの?」
祐人はなにかに怯えているようだった。
「ううん、どこにも行かないよ…」
祐希は祐人に微笑んだ。
「そっか、よかった…」
祐人は父親と家で二人っきりになりたくないのか、あるいは、祐希とできる限り一緒にいたいのだろう。祐人は嬉しそうな声で言った。