Miseria ~幸せな悲劇~

メイが玄関の扉を開けようとすると、


「うわっ!」


外から誰かが先に扉を開けた。


「姉ちゃん…?」


そこには弱々しい声で祐希の弟、水島祐人(ミズシマユウト)が顔を覗かせていた。


祐人は祐希に似た華奢で細い体と、潤った大きな瞳をしていたが、髪の色は祐希と違い亜麻色だった。写真の中の父親の髪と同じ色である。


「なんだ、祐人か」


美花が安心したように言った。祐希の幼馴染みである美花にとって、祐人は弟のような存在だった。


祐人はキョトンとした顔でメイ達の顔を見渡した。


「……姉ちゃん、遊びに行くの?」


祐人はなにかに怯えているようだった。


「ううん、どこにも行かないよ…」


祐希は祐人に微笑んだ。


「そっか、よかった…」


祐人は父親と家で二人っきりになりたくないのか、あるいは、祐希とできる限り一緒にいたいのだろう。祐人は嬉しそうな声で言った。
< 55 / 394 >

この作品をシェア

pagetop