Miseria ~幸せな悲劇~
翌日の朝。空は雲一つない晴天だった。メイは日が射し込む教室の窓際にある自分の机に座り、祐希と詩依に昨日の美花について話していた。
「はっ? 美花が変だって?」
詩依がメイにむかって言った。
「だって、美花はいつもなら何が起きてもうじうじ悩んだりしないのに、最近の美花は何かを抱えてるっていうか、うまく言葉にはできないんだけど……」
曇った表情でメイが言った。
「うーん、別にいつも通りだと思ったけどね」
詩依は表情一つ変えずに言った。昨日の出来事からして、詩依は美花よりもむしろ祐希の方を心配していた。
「……でもたしかに美花、昨日の喧嘩の時すぐに手を出しちゃってたし……どこかイライラしてる感じはあったよね」
祐希が弱々しい面持ちで言った。彼女もメイと同じく美花の違和感には気づいているようだった。
そこへ、
「あっ、美花!」
話の渦中にあった美花が教室の中に入ってきた。目が赤く、顔もげっそりとしており、明らかに様子がおかしかった。
「み、美花?」
美花は上の空で祐希の側を歩いていく。祐希に呼びかけられて、美花はようやく祐希の存在に目がいった。
「ああ、祐希か、おはよ…」
それだけ言って美花は自分の席についてしまった。どこかメイ達を遠ざけているようだった。
「どういうことよ、あいつ?」
詩依はポツリと呟いた。
「…………」
祐希とメイは心配そうに机に突っ伏す美花を見つめた。彼女が今どんな表情をしているのか。メイはそのことに思いを巡らせるだけで胸が苦しくなった。