Miseria ~幸せな悲劇~

翌日の朝。空は雲一つない晴天だった。メイは日が射し込む教室の窓際にある自分の机に座り、祐希と詩依に昨日の美花について話していた。


「はっ? 美花が変だって?」


詩依がメイにむかって言った。


「だって、美花はいつもなら何が起きてもうじうじ悩んだりしないのに、最近の美花は何かを抱えてるっていうか、うまく言葉にはできないんだけど……」


曇った表情でメイが言った。


「うーん、別にいつも通りだと思ったけどね」


詩依は表情一つ変えずに言った。昨日の出来事からして、詩依は美花よりもむしろ祐希の方を心配していた。


「……でもたしかに美花、昨日の喧嘩の時すぐに手を出しちゃってたし……どこかイライラしてる感じはあったよね」


祐希が弱々しい面持ちで言った。彼女もメイと同じく美花の違和感には気づいているようだった。


そこへ、


「あっ、美花!」


話の渦中にあった美花が教室の中に入ってきた。目が赤く、顔もげっそりとしており、明らかに様子がおかしかった。


「み、美花?」


美花は上の空で祐希の側を歩いていく。祐希に呼びかけられて、美花はようやく祐希の存在に目がいった。


「ああ、祐希か、おはよ…」


それだけ言って美花は自分の席についてしまった。どこかメイ達を遠ざけているようだった。


「どういうことよ、あいつ?」


詩依はポツリと呟いた。


「…………」


祐希とメイは心配そうに机に突っ伏す美花を見つめた。彼女が今どんな表情をしているのか。メイはそのことに思いを巡らせるだけで胸が苦しくなった。
< 65 / 394 >

この作品をシェア

pagetop